インプラントを用いた矯正治療とは
矯正用インプラントアンカーを用いた矯正で治療の幅が広がります
新しい矯正治療の一つとして、インプラントを矯正歯科治療に応用したものがあります。矯正用インプラントアンカーには、プレート状のチタンの板を骨に固定して使うものと、ネジ状のインプラントを顎骨に埋入してこれを固定源として使うタイプに分かれます。中でも、歯科矯正用アンカースクリューという直径が0.8から2.0mm、長さが4.0から10.0mmのねじのような細いインプラントを骨の中に埋め込み、これを矯正治療に利用する方法が近年増えております。通常のインプラントと比べこの歯科矯正用アンカースクリューは非常に細いため、埋め込む際に大掛かりな外科手術が不要で、術後もほとんど痛くありません。また、力を加えると動いてしまう歯とは違い、矯正用アンカースクリューは小型なのにもかかわらず、力を加えても動きません。そのため、絶対に動かない土台【絶対的な固定源】となります。この動かない土台を利用して、今までなら外科手術を併用しなければ治せなかった症例(gummy smile;ガミースマイルの治療など)が治せたり、ヘッドギアが不要になるなど、症例によって様々なメリットが得られる可能性がでてきました。また、3年かかっていた症例が2年強で治せたりと、症例によりますが治療期間の短縮が期待できる可能性があります。この歯科矯正用アンカースクリューは通常の表側矯正、裏側矯正、部分矯正と全ての矯正法に適用可能ですが、子供の矯正では使用が限定されます。また、矯正用インプラントアンカーのなかでも歯科矯正用アンカースクリューは、矯正治療終了後に取り外す為、患者さんへの負担はほとんどありません。
インプラント矯正の注意点
薬事法の承認が得られた以降、インプラントアンカーを使用すればなんでもできるといった風潮がしばしば見受けられます。
しかし、よく歯が動きすぎる為、それによる弊害も確認され始めています。例えば、生体の許容範囲を超えて前歯を引っ込めすぎた結果、歯根が吸収してしまったり、顎骨から歯根の先端が飛び出てしまったりするケースなどが確認されております。また、症例によっては治療後の安定性が不確定なものもありますし、歯科矯正用アンカースクリューを用いることで矯正治療が早くなる(一般にスピード矯正などど言われているが)という科学的根拠は現時点では確認されておりません。したがって、ご自分の症例がインプラント矯正を適用できるかどうかは主治医との相談を進めるべきでしょう。